デジタルウェルネスのための技術設計論

テクノロジーと人の相互関係

ここでみたようにデジタルウェルビーイングは、テクノロジーと人が共同しお互いに作りあう価値こそがデジタルウェルビーイングの本質であると考えています。そして、そのためには、ユーザーの立場からは、よりよくデジタルデバイスを「使う」ことが求められますが、テクノロジーの側には、ウェルビーイングを意識した「設計(デザイン)」が求められるでしょう。

デジタルウェルネスのためのテクノロジーデザインの3段階

そのデザインの方向性は、

①ウェルビーイングを阻害する要素を除いた設計、
②ウェルビーイングへ誘導したりその支援をする設計、
③ユーザーがウェルビーイングに自らなることができるための能力が身に着く設計、

の3段階で考える必要があるとデジタルウェルネスラボでは考えています。

テクノロジーにおけるデザインの重要性

テクノロジーにおけるデザインとはどのようなものでしょうか。テクノロジーを通してユーザーがどういう体験するのかは、デザインによるところが大きいものです。もしもデザインに何の意味もないのであれば、Apple製品に世界中の人が魅了される理由は説明できないでしょう。そのApple製品のデザインの基礎を作った一人が、ドナルド・ノーマンだと言われています。彼は、UXデザインの概念をつくったひとで、人間中心設計の考えを世界に広めました。

アテンション・エコノミーにおけるテクノロジーデザイン

一方で、Apple社をはじめ利益を上げるためには、ユーザーを引き留めておく必要があり、そのための技術設計もまた同時に採用されているものです。そうした、IT技術におけるユーザーを引き留めるための「説得」を行う技術をB.J.フォッグは説得型技術と呼びました。しかし、その注意を奪うことや誘導の意図が、その企業の「お金儲け」であるなら、人々が不幸になっても仕方ありません。

そこで、こうしたことから、元グーグルで今ではシリコンバレーの良心ともいわれる、トリスタン・ハリスは、2017年頃から、タイプウェルスペントの考えを提唱するようになり、その影響力の強さから、Apple製品とAndroid端末に、スクリーンタイム管理アプリがプリインストールされるようになりました。

ウェルビーイングは設計可能か?

また、より積極的にウェルビーイングの考えを技術設計論に応用するべきという流れも存在し、Positive Computingという技術設計論が生まれました。

そこでは、ウェルビーイングテクノロジーを、①予防型②積極型③特化型に分類し、ウェルビーイングの要素を阻害する要因を取り除くのみならず、積極的にまたは特化して、ウェルビーイングを支援する技術を開発するべきだと主張します。

しかし、そのウェルビーイングの概念の前提が、主にポジティブ心理学であり、また測定可能なウェルビーイングを前提としている面があるため、日本文化に固有のウェルビーイングの繁栄ができていないのではないかという指摘もなされています。

デジタルウェルネスラボの考えるデジタルウェルネスな技術設計

私たちは、ある意味で究極のウェルビーイングでありデジタルウェルネスのための技術設計として、おのおのがウェルビーイングになるためのの能力の発揮それ自体をサポートする技術設計の方向性を考えています。なぜなら、ウェルビーイングというものは、標準化されたり、また個人の中でも固定されるものではなく、常に変化するものだからです。こうしたある意味で「アジャイル」なものであるため、テクノロジーは、おのおのの能力の発揮のサポートという方向を向く必要があると考えられるのです。